第36回日本靴医学会学術集会
会長 早稲田 明生
わせだ整形外科
はじめに、第36回日本靴医学会を開催させて頂けることに感謝申し上げます。この二年間コロナ禍で現地開催が叶いませんでしたが、本年はテーマを「人と靴との調和への挑戦」として三年ぶりに現地で開催することに致しました。しかしながら現在、行動制限は出ていないものの第7波は未だピークを越えておらず、決して安心できる状況ではありません。この中で、参加者の皆様が少しでも安心して本学術集会にご参加いただけるよう十分に必要な感染防止策をとって開催させて頂きます。残念ながら会長招宴ならびに全員懇親会は開催しないことに致しましたが、参加者の皆様におかれましてはご理解、ご協力のほどお願い申し上げます。
会場は私が小学生のころから大学に進学するまで過ごしたふるさとにある鎌倉芸術館を選ばせて頂きました。医師となってから長い間勤務医として働いてきて、昨年から心機一転開業医となり一変した環境に対応すべく奮闘している毎日です。開業医の身できちんと学会を主催出来るのか、不安を抱えながらではありましたが、慶應義塾大学の足グループのメンバーをはじめ多くの方々に支えられながら皆様をお迎えする準備を進めて参りました。学会運営につきましては不慣れな点が多く、ホームページによる告知をはじめ皆様に対する様々なご案内が遅くなったことをお詫び申し上げます。学会を開催するには学術的な面はもちろんの事、資金面でも多くの方面の方々の援助が必要となります。コロナ禍で多くの入場者が望めないのでは、という懸念がある中、沢山の方々から援助、ご寄付を頂いたことに深く感謝致します。
高齢化が進んだ現在、健康増進や健康寿命を伸ばすためよりいっそう靴・装具の重要性は高まってきています。靴医学の今後の発展には若い人の発想と情熱、そしてエネルギーが何よりも大切であると考え、学会一日目に学生、若い研究者、臨床家のために“ルーキーズセッション”を設けました。会場は雰囲気が硬くならずに議論が出来るようにテーブル、椅子の配置を考えました。ルーキーを応援できるような温かいセッションになることを願っております。
また、本学会では私が長年かかわってきた糖尿病足に対して靴・装具が果たす役割に、また小児の靴に関しては足の成長と靴の関係にフォーカスを当ててシンポジウムを組みました。さらに足底挿板に関しては足の装具を語る上での原点と考え、合わせて3つのシンポジウムとパネルディスカッションを企画いたしました。今まで主に健常人を対象としてきたスポーツ、靴業界、一方障害を持った人を対象としてきた医療業界がそれぞれ蓄積してきた研究成果を業界の垣根を越えて結集して、より高いレベルであらゆる人の望みに応えることが求められていきます。今までの知識の集約、さらにこれからの装具、靴の発展は到底医師だけでなせるものではありません。これらは靴・装具の作成にかかわるほぼすべての方々のたゆまぬ努力から生まれてくるものと思っております。様々な視点からの議論の活性化を期待して、本学会の進行役としての座長には医師以外の先生方にも多くお願い致しました。
足底挿板の2つのパネルディスカッションは学会二日目の午後から予定しておりますがこれらは、いざ鎌倉~第36回日本靴医学会プロジェクト市民公開講座~日本の靴の温故知新、として一般の方々にも参加して頂く予定です。最後にはパネラーに本音を語って頂くことを目的として“靴・足底挿板 座談会”を企画致しました。
なお、特別講演として学会一日目に国保中央病院院長の佐本憲宏先生に「外反母趾の保存治療」を、二日目には元靴医学会理事長の井口傑先生に「日本における靴と医学の関わりの歴史」を、オットーボック・ジャパン株式会社の深谷香奈に「パラリンピック修理サービスセンター -大舞台に挑む選手を支えるケアとは-」をお願いしております。
鎌倉の地で皆様と直接お会いし、靴や装具にかかわる方々の全ての力を結集できるような熱い議論を楽しみにしております。
2022年8吉日